胸が痛い、くるしい、重たい、締めつけられる
胸が痛い、くるしい、重たい、締めつけられる
胸の痛みをきたす疾患は非常にたくさん存在し、よくある症状の一つです。しかし胸痛の中には命に関わるような緊急性の高い疾患も含まれます。そのため、胸の気になる症状があれば早めの受診が望ましいと言えるでしょう。
これらの症状が当てはまる方はご相談ください。
胸の痛みまたは不快感は、多くの病気によって引き起こされます。それらすべてが心臓の病気というわけではありません。胸痛は、胸の辺りにある臓器の異常により起こります。具体的には心臓、血管、消化器系、肺、筋肉、神経、骨、皮膚の病気によって起こることがあります。
これらの中で緊急性のある疾患は心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症、緊張性気胸、食道破裂の5つです。これらを絶対に見落とさないようにしなければなりません。
心臓の周りには冠動脈という心臓自身に栄養・酸素を供給している細い血管が存在します。その血管が動脈硬化などによって狭くなると、心筋(心臓の筋肉)に送られる血液量が不足し、心筋が酸素不足となり痛みを自覚します。
労作性狭心症では「階段を上ると胸が締めつけられるように痛くなる」、「重いものを持ち上げたり、坂道を歩いたりすると胸が苦しく痛む、安静にすると楽になる」という労作(運動)によって誘発される症状がみられます。運動時には全身に送らないといけない必要な血液の量が安静時よりも増えるため、心臓は安静時よりもたくさん仕事をしなければならず、たくさん仕事をするために心臓への血流も増加します。しかしその通り道である冠動脈に狭窄(狭いところ)があると心臓へ血液が足りなくなってしまい痛みを感じてしまうのです。そのため狭心症は一般的には運動時に症状が起こりやすく、安静にして休んでいると症状が治まることが多いという特徴があります。心臓への血液が足りないことは一時的であるため痛みは多くの場合、数分までで、長くても30分以内となります。しかし、動脈硬化が進行し冠動脈の狭窄度がさらに上がると、最終的には安静時でも心臓への血液が足りなくなってしまい、安静時(じっとしている時)にも胸の苦しい、痛いといった症状が出てしまうことがあります。安静時の胸の痛みが出現する場合は不安定狭心症の可能性があります。不安定狭心症と診断された場合は心臓の血管が詰まりかかっている状態であり緊急での検査、治療が必要となります。
狭心症による胸の痛みは狭心痛、狭心症発作とも言われます。痛みの特徴としては圧迫感や絞扼(こうやく)感と表現され、胸が押される感じ、締め付けられる感じ、なんとなく苦しい感じなどと訴える場合が多いです。心臓のある左胸に起こることも、もちろんありますがみぞおち、背中、肩、頸などに症状が起こる場合もあります。歯やのどが痛むケースもあります。
心筋梗塞とは、動脈硬化が進行して冠動脈にできていたプラーク(血管内のコレステロールによるコブ)が冠動脈を塞いでしまい、心筋に血液が完全に行かなくなり、心筋が壊死した状態をいいます。突然、胸が焼けるように重苦しくなり、締め付けられ押しつぶされるような症状が現れます。冷や汗が出たり、吐き気があったりすることもあります。閉塞してしまった血管は血流が戻らないため通常は胸の痛みは30分以上持続し、長い時には数時間に及ぶこともあります。治療には冠動脈内に詰まった血栓に対してバルーン(風船)が先端についたカテーテル(細い管)を血管内に挿入し、詰まった部分を拡げたり、再閉塞を防ぐためにステント(金属の筒状の網)を血管内に広げて留置したりするカテーテル治療があります。速やかにこれらの治療を行い、詰まった血管の血液の流れを再開させることが非常に重要です。治療を行わない場合は致死性不整脈を起こし、最悪の場合は死亡する場合もあるため、緊急で治療が必要な病気とされています。
まずは内科受診が良いと思います。緊急性のある疾患の多くは循環動態に関わる心臓・血管疾患が多く、循環器内科が専門とする領域の疾患です。そのためまずは胸が痛い症状が持続する場合は内科の中でも特に循環器内科を受診して心臓・血管疾患かどうかを確認していただくと良いかと思います。
問診がとても大切です。当院では胸の症状で来院された方には様々な病気を念頭に置いて事前に問診をさせていただきます。
部位 | 胸のどこか?右、左、真ん中、全体など |
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症状 | 痛み、おされる感じ、締め付けられる感じ、チクチク、ズキズキなど |
強さ・程度 | 弱い、強い、激痛など |
発症時間・経過 | じっとしている時(安静時)、運動している時(労作時)、30分以上持続するか、突然、徐々に出現 |
増悪・寛解因子 | 運動で悪化する、休むと治る、深呼吸で痛くなるなど |
随伴症状・関連症状 | 冷汗を伴うか、吐き気はないか、肩や歯など痛くならないか(放散痛) |
これらの問診で事前にどのような疾患が疑われるかを想定し検査を行います。
検査は心電図、レントゲン検査、血液検査、超音波検査、ホルター心電図などを行います。心筋梗塞が疑われる場合は心筋障害のバイオマーカーであるトロポニンの迅速検査を行います。これらの検査により診断がついた場合、疾患によっては入院治療のできる高次医療機関へご紹介させていただきます。
原因によって治療が異なります。心筋梗塞であれば通常は閉塞した心臓の周囲の血管である冠動脈の流れを改善させる必要がありカテーテル治療や冠動脈バイパス手術が必要になります。一方、冠動脈の攣縮(けいれん)による冠攣縮性狭心症であれば手術は必要なく内服薬による治療で症状が改善します。逆流性食道炎を認めた場合も胃酸の逆流を抑える内服薬による治療を行うことで症状が改善します。
このように胸の痛くなる病気には経過観察で良い病気から内服薬で治療するもの、緊急の入院や手術治療が必要となるものまで様々な種類の病気があります。そのためしっかり診察・検査を受けていただき診断をつけることが重要です。
胸の症状で心配なことがありましたら、早めに診察を受けるようにしてください。